【徒然草 現代語訳】第七十二段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

賤しげなるもの。居たるあたりに調度の多き、硯に筆の多き、持仏堂に仏の多き、前栽に石、草木の多き、家の内に子孫の多き、人にあひて詞の多き、願分に作善多く書きのせたる。

多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚のちり。

翻訳

下品であさましいもの、座っている周りに道具類が氾濫しているの、硯に筆が何本も並んでるの、持仏堂が仏像だらけなの、庭の植え込みにやたら石や草木が置かれ植わってるの、家に子供や孫がうじゃうじゃいるの、人に逢って喋り過ぎるの、神様に捧げる願文に己の善行をずらずら書き連ねているの。

方や多くてもみっともなくないのは、文車に乗せてある書物、ゴミ捨て場の塵芥。

註釈

○孫
読みは「うまご」。

○作善
読みは「さぜん」。

○文車
読みは「ふぐるま」。書物運搬用の室内車。


またしても「枕草子」まがいの段。
出だしあたりに比べれば、多少こなれてきてはいますが、本家のチャーミングさとリズム感には遠く及びません。

参考に「枕草子」の「いやしげなるもの」の段を載せておきます。

いやしげなるもの

式部の丞の笏。黒き髪の筋わろき。布屏風の新しき。古り黒みたるは、さる言ふかひなき物にて、なかなかなにとも見えず。新しうしたてて、桜の花多く咲かせて、胡粉、朱砂など彩どりたる絵ども描きたる。遣戸厨子。法師のふとりたる。まことの出雲筵の畳。

追記

私も家ん中がガキだらけなのは御免蒙りたいです。


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