【徒然草 現代語訳】第三十一段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

雪のおもしろう降りたりし朝、人のがり言ふべき事ありて、文をやるとて、雪のことなにともいはざりし返事に、この雪いかが見ると一筆宣はせぬ程のひがひがしからん人の仰せらるること、聞き入るべきかは。返すがへすくちをしき御心なりといひたりしこそ、をかしかりしか。
今はなき人なれば、かばかりのことも忘れがたし。

翻訳

うっとりするよな雪景色の朝に、さる人のところへ言付けてやりたいことがあり、手紙を遣わそうとして、雪には触れずに済ませたことのお返しに、この雪をどう見ましたかの一筆がない、その程度の人の仰る言葉が心に響くはずもないではありませんか、あ~あ、まったく私の見込み違い、風雅を解さない方だったのですね、と云ってきたのには、ハッと思わされてしまった。
今は故人となった人ゆえ、ほんのそれだけのことだが妙に忘れがたい。

註釈


一目置く人だったんでしょうね。
単なる毒舌の批評家にとどまらない、こういう兼好法師の(意外に)謙虚な面は、もっと見直されていいと思っています。


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