
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
大納言法印のめしつかひし乙鶴丸、やすら殿といふ者を知りて、常に行き通ひしに、或時出でて帰り来たるを、法印、いづくへ行きつるぞと問ひしかば、やすら殿のがりまかりて候といふ。そのやすら殿は、男か法師かとまた問はれて、袖かきあはせて、いかが候ふらむ、頭をば見候はずと答へ申しき。
などか、頭ばかりの見えざりけむ。
翻訳
大納言法印が召し使っていた乙鶴丸、やすら殿という者と通じ合いねんごろになって、しょっちゅう通っていたある日、いつものように出掛けていて帰ってきた折に法印が、何処へ行っておったのだと訊ねたところ、やすら殿のお宅に伺っておりましたとの返事。そのやすら殿というのは、俗人であるかそれとも僧侶かと重ねて問うと、殊勝らしくかしこまり、さてどうでしたでしょうか、ぶっちゃけ頭は拝見しておりませんので、としれっとお答えした。
またどうして頭だけが見えなかったのかしらん。
註釈
○大納言法印
大納言の子息で出家した者の呼び名。この人物の詳細は不明。書くと差し障りがあったか?
○やすら殿
こちらの人物も詳細不明。安楽?安良?どちらにせよ渾名、もしくは今で云うハンドルネームみたいなものか。明らかに差し障りがあったと思われる。
そりゃあんた常に後ろから掘られてるからでしょうが。って、兼好も重々わかってるでしょうけどね。
猫またネタに続いて、「股」ネタを持ってくる、こーゆー兼好のセンスを愛してやまない私です。
てかこの法印の問い詰め、明らかに悋気ですね。
追記
教科書に載せろよなー、この段。きっとみんな古文が好きになるよん。