【徒然草 現代語訳】第二百三十七段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

柳筥に据うるものは、たてざま横様、物によるべきにや。巻物などはたてざまにおきて、木のあはいより紙ひねりを通して、ゆひつく。硯もたてざまに置きたる、筆ころばず、よしと、三條右大臣殿仰せられき。

勘解由小路の家の能書の人々は、かりにもたてざまにおかるることなし。必ず縦様に据ゑられ侍りき。

翻訳

柳箱に物をしまう際に、横にしまうのか縦にしまうのかは、物により違うものなのだろうか。「巻物類は縦に置き、柳の枝と枝の隙間から紙撚を通して結わい付ける。硯もまた縦に置く、筆が転ばず具合がいい」と三条右大臣殿が仰せられた。

時に勘解由小路家の能書家の方々は、間違っても硯を縦に置かれることはない。決まって横に据えられておられました。

註釈

○柳筥
やないばこ。柳を編んで脚をつけた収納具。

○三條右大臣
三条公茂、もしくは實重のどちらか。

○勘解由小路家
かでのこうじけ。三磧の一人藤原行成の子孫で書の家の世尊寺家のこと。室町時代末に廃絶。

○能書
読みは「のうじょ」。



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