
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
陰陽師有宗入道、鎌倉よりのぼりて、尋ねまうで来りしが、まづさし入りて、この庭のいたづらにひろきこと、あさましく、あるべからぬことなり。道を知る者は植うることをつとむ。細道一つ殘して、皆はたけに作り給へといさめ侍りき。
誠に、少しの地をもいたづらにおかむことは、益なきことなり。くふ物、薬種など植ゑおくべし。
翻訳
陰陽師安倍有宗入道が、鎌倉より上洛し、我が家に足を運んでくれた折のこと、門から入って真っ先に、「この庭は無駄に広過ぎる、開いた口が塞がらない、こんなことはもっての外だ。ものの道理をわきまえた者なら、せっせと植物を植えるはず。小道を一本だけ残し、後は残らず畑にしておしまいなさい」とたしなめられた。
まことにもって、ほんの僅かな土地であろうとほったらかしにしておくのは勿体ないこと。食べられるもの、薬となるもの等の草木を植えておくべきなのだ。
註釈
○陰陽師有宗入道
安倍有宗。安倍晴明から数えて十五代目の子孫。天文博士。
安倍晴明の直系子孫は、室町時代初期、足利義満の頃より土御門の苗字を名乗られています。
追記
安倍晋三さんと安倍晴明が祖先を辿れば同じという話を聞いたことがありますが、ホントかな。