【徒然草 現代語訳】第二百五段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

比叡山に、大師勧請の起請といふ事は、慈慧僧正書き始め給ひけるなり。起請文といふこと、法曹にはその沙汰なし。古への聖代、すべて起請文につきて行はるる政はなきを、近代この事流布したるなり。

また、法令には、水火に穢れを立てず。入物には穢れあるべし。

翻訳

比叡山にある伝教大師への起請文というのは、慈慧僧正がお始めになられたことだそうだ。起請文については、法律家の埒外である。遥か昔のお上の親政時代には、起請文に基づいて政治が行われることなどついぞなかったものを、昨今はすっかり当たり前のようになってしまった。

時に、法令においては、水と火それ自体に穢れがあるとはしておらず、それぞれを盛る容器に穢れありと規定されているようだ。

註釈

○比叡山
読みは「ひえのやま」

○慈慧僧正
第十八代天台座主。

○法令
読みは「ほうりょう」。


なんだか含みのある段です。
奥歯にものが挟まったような思わせ振りな記述は、一部のTwitterに通じるものがありそうです。


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