【徒然草 現代語訳】第二百十三段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

御前の火爐に火をおく時は、火ばししてはさむことなし。かはらけより直ちにうつすべし。されば、ころび落ちぬやうに、心得て炭をつむべきなり。

八幡の御幸に、供奉の人、浄衣を着て、手にて炭をさされければ、ある有職の人、白き物を着たる日は、火箸を用ゐる、くるしからずと申されけり。

翻訳

天皇上皇の御前の火鉢に炭火を入れる際には、火箸を使って挟むのは禁忌。土器から直に移さねばならない。よって転び落ちないよう、細心の注意を払って炭を積まねばならないのだ。

石清水八幡宮に御幸のあった折、従者が白衣を着て、手で炭を継いだので、さる有識者が「白いものを着ている日なら、火箸を用いても差し障りない」と申されたそうだ。

註釈

○八幡
石清水八幡宮。

○御幸
読みは「ごこう」。

○供奉
読みは「ぐぶ」。

○有識
読みは「ゆうそく」。


「火の物断ち」といって、火を通したものを口にしない祈願の作法がありますが、それに通じるものがあるんでしょうか。

追記

近頃は有識者云々と聞くと、つい苦笑してしまいますね。


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