
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
御前の火爐に火をおく時は、火ばししてはさむことなし。かはらけより直ちにうつすべし。されば、ころび落ちぬやうに、心得て炭をつむべきなり。
八幡の御幸に、供奉の人、浄衣を着て、手にて炭をさされければ、ある有職の人、白き物を着たる日は、火箸を用ゐる、くるしからずと申されけり。
翻訳
天皇上皇の御前の火鉢に炭火を入れる際には、火箸を使って挟むのは禁忌。土器から直に移さねばならない。よって転び落ちないよう、細心の注意を払って炭を積まねばならないのだ。
石清水八幡宮に御幸のあった折、従者が白衣を着て、手で炭を継いだので、さる有識者が「白いものを着ている日なら、火箸を用いても差し障りない」と申されたそうだ。
註釈
○八幡
石清水八幡宮。
○御幸
読みは「ごこう」。
○供奉
読みは「ぐぶ」。
○有識
読みは「ゆうそく」。
「火の物断ち」といって、火を通したものを口にしない祈願の作法がありますが、それに通じるものがあるんでしょうか。
追記
近頃は有識者云々と聞くと、つい苦笑してしまいますね。