
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
狐は人にくひつくものなり。堀川殿にて、舎人が寝たる足を狐にくはる。仁和寺にて、夜、本寺の前を通る下法師に、狐三つ飛びかかりてくひつきければ、刀を抜きてこれをふせぐ間、狐二疋を突く。一つはつきころしぬ。二つは逃げぬ。法師はあまた所くはれながら、ことゆゑなかりけり。
翻訳
狐は人に噛みつくものなのである。堀川殿で、舎人が寝ている間に足を狐に噛まれた。仁和寺では、深夜、本寺の前を通り過ぎようとした下働きの僧侶に、狐が三匹飛びかかって噛みつき、すかさず刀を抜いて防戦するうちに、二匹を突いた。内、一匹は突き殺した。残る二匹は逃げ去った。僧はいたるところに噛みつかれたものの、命に別状はなかったという。
註釈
○堀川殿
兼好が俗世で出仕していた堀川家。
○舎人
貴族に仕える下僕。
○下法師
読みは「しもほうし」。
この段で何がびっくりするかって、下働きとは云えこの時代、法師がカジュアルに刀を佩いていたことですね。
追記
古代狐の鳴き声は「キツ」「ケツ」と表記されており、キツネの名前はここから(キツ音)ついたという説があります