
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
とこしなへに違順につかはるることは、ひとへに苦樂のためなり。樂といふは、好み愛することなり。これを求むることやむ時なし。樂欲する所、一つには名なり。名に二種あり。行跡と才藝との譽なり。二つには色欲、三つには味なり。萬の願ひ、この三つにはしかず。これ、?倒の想よりおこりて、若干のわづらひあり。求めざらむにはしかじ。
翻訳
絶え間なく逆境と順境とに振り回され疲弊してしまうのは、ひとえに苦楽によるものである。楽とは愛好すること、つまり惚れ込み愛を惜しまないことだ。この志向性癖は生きている限り止むことはない。乞い願うことの筆頭に挙げられるのは、なんと云っても名声だ。名声には二つある。日頃の行いからくる名声と、学芸における名声と。次が色欲、そして食欲。ありとあらゆる願い事も、この三つに勝るものはない。困ったことにこの三つは、身の程をわきまえない勘違いから起こり、途方もない煩悶をもたらす。求めないに越したことはない。