
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
御産のとき甑落すことは、定まれることにはあらず、御胞衣とどこほるときのまじなひなり。とどこほらせ給はねば、このことなし。
下ざまよりこと起りて、させる本説なし。大原の里の甑を召すなり。古き宝蔵の絵に、賤しき人の子産みたる所に、甑落したるをかきたり。
翻訳
中宮、女御といった方々のご出産の際に、甑を屋根から転げ落とすおまじないは、必ずしも必須事項ではない、後産で胎盤等ががうまく降りてこない時の禁厭なのだ。首尾よく降りてこられない限り、行われることはない。
この行事は下々の習わしに起源しており、確たる根拠のあるものではない。大原の里の甑をお取り寄せになりご使用になられる。古い宝蔵の絵に、賤しい身分の女のお産で、甑を棟から転がして落としている様子が描かれている。
註釈
○御産
読みは「ごさん」。皇子皇女が誕生する出産。
○甑
こしき。瓦製の蒸し器。
○御胞衣
おんえな。胎児を包んでいた胎盤、膜のこと。
出家の話が続いたので、出産ネタ。バランス感覚が働いたんでしょう。
追記
堀ちえみさんは、昔、紳助から「趣味出産」と紹介されていましたね。