【徒然草 現代語訳】第六十三段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

後七日の阿闍梨、武者を集むること、いつとかや盗人にあひにけるより、宿直人とて、かくことことしくなりにけり。一年の相は、この修中のありさまにこそ見ゆなれば、兵を用ゐむこと、おだやかならぬことなり。

翻訳

後七日のご修法を統べる阿闍梨が、武士たちを集め護衛させるのは、いつぞやの盗賊に襲われた事件からとのこと、宿直人と称しこのように仰々しいものとなってしまった。その年の吉凶は、この修法次第、一連の流れの中にこそ顕れると云うのに、血なまぐさい兵士を用いるとは、実に不穏としか云いようがない。

註釈

○後七日の修法
正月八日から七日間、大内裏で行われる真言宗の修法。

○阿闍梨
この時代の読みは「あざり」。

○宿直人
とのいびと。


朝廷を警護する武士と云えば時代順に「滝口の武者」「北面の武士」「西面の武士」が挙げられますが、内、白河上皇が設置し、西行も奉仕していた「北面の武士」は、名目上明治維新まで存続していたんですよ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です