【徒然草 現代語訳】第四十三段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

春の暮つかた、のどやかに艶なる空に、いやしからぬ家の、奥ふかく、木だち物ふりて、庭にちりしをれたる花、見過しがたきを、さし入りて見れば、南面の格子、皆おろしてさびしげなるに、東に向きて、妻戸のよきほどにあきたる、御簾のやぶれより見れば、かたちきよげなる男の、年廿ばかりにて、うちとけたれど、心にくくのどやかなるさまして、机のうへに文をくりひろげて見ゐたり。

いかなる人なりけん、尋ね聞かまほし。

翻訳

春も暮れようとする頃、のどかでどこかしらなまめかしい空の下、品あるたたずまいの家の奥深く、年ふりた木々といい、庭に散り敷かれた落花といい、どうにも見過ごせない風情にそっと足を踏み入れてみると、南向きの格子戸は皆おろしていかにも寂しげではあるが、東に面した妻戸はいい塩梅に開いている、そこに掛けられた御簾の隙間からちらりと覗いてみると、容姿端麗な貴公子が、年のころは二十歳くらいであろうか、ぐっとくつろぎながらも奥ゆかしさ雅やかさは隠しようもなく、机に書物を広げ眺めるともなく見ている。

いかなる素性の人なのか、今もって訪ね訊いてみたいと思っている。

註釈

○見過し
当時の読みは「みすぐし」

○妻戸
両開きの戸


おっとBL!しかもストーカーもの。
途中まで思わせ振りしておいて、主語(男)を最後にばらす書きようも心憎いですね。
この段、教科書に採られたら腐女子は絶対喰いつきますよ。

以前のひと晩夜もすがら月見をした段といい、兼好法師、案外男も女もイケる口だったのかもしれません。
女は高嶺も下々もオッケーみたいでしたから、ストライクゾーン広過ぎですね。

で、あんた、その後その男んち実際に訪ねたの?


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