【徒然草 現代語訳】第百八十二段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

四条大納言隆親卿、からざけといふものを供御に参らせられたりけるを、かくあやしき物、参るやうあらじと人の申しけるを聞きて、大納言、鮭といふ魚参らぬことにてあらむにこそあれ。鮭のしらぼし、なでふことかあらむ、鮎のしらぼしは参らぬかはと申されけり。

翻訳

四条大納言藤原隆親卿が、乾鮭というものをお上の御膳にお出し申し上げたところ、「かような胡散臭いものをお上に差し上げるなぞ、聞いたことがない」と云う人がいた、そこで大納言は、「そもそも鮭自体お出ししないものと決まっておるならともかく、たとえ鮭であっても白乾を差し上げるのになんの差し障りがあろうか。鮎の白乾は差し上げるではないか!」と仰られたという。

註釈

○四条大納言隆親卿
平安時代末期の公卿、藤原隆親(たかちか)。公家はそれぞれお家芸を持つが、四条家は包丁(料理)と笙の家であった。

○共御
読みは「ぐご」。天皇にお出しする料理。


隆親は平清盛の妻の妹を娶っていました。しかも、保元の乱で戦死した藤原頼長(以前の段でも出てきた辣腕の左大臣)の家令(執事)だったにもかかわらず、保元の乱では頼長に与していませんでした。
その辺りの裏事情が反映したと思われる、文字通り「生臭い」段です。

追記

私は鮭より鮎が好きです。


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