
神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。
原文
よろづにいみじくとも、色好まざらむ男は、いとさうざうしく、玉の巵の当なき心地ぞすべき。
露霜にしほたれて、所定めずまどひ歩き、親のいさめ、世のそしりをつつむに心の暇なく、あふさきるさに思ひ乱れ、さるは独り寝がちに、まどろむ夜なきこそをかしけれ。
さりとて、ひたすらたはれたる方にはあらで、女にたやすからず思はれむこそ、あらまほしかるべきわざなれ。
翻訳
万事そつなく一見非の打ち所のないように見えても、男女の機微を解さない男は、実に味気なく、玉の盃の底が抜けているかのように感じられてしまう。
露や霜に濡れそぼるのもお構いなしに、ふらふらとあてもなくうろついてさ迷い歩き、親からの小言、世間の冷ややかな眼差しを憚るがゆえにいっ時たりとも心やすまることなく、ああでもないこうでもないとひたすら悶え苦しみ、そういう男に限って引く手あまたどころかむしろ独り寝をかこちがちで、ぐっすり眠ることすらままならない、そんな男が傍から見て哀愁があるというものだ。
もっとも、ただひたすら色恋に溺れるといった素振りもなく、女の側からすれば落とし甲斐があると思われる男こそが、恋の強者、男の中の男というものだ。
註釈
巵は盃のこと。巵に注いだ酒を巵酒(ししゅ)なんて云いますね。
かなり振りかぶってますが、所詮一般論の域を出ていない青臭さがご愛敬。
経験値が低いと申しますか、本人の願望も多分に含まれているんじゃないでしょうか。
こういうこと云う男って、たいがい非モテですね。