【徒然草 現代語訳】第百五十六段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

大臣の大饗は、さるべき所を申しうけておこなふ、常のことなり。宇治左大臣殿は、東三条殿にておこなはる。内裏にてありけるを、申されけるによりて、他所へ行幸ありけり。させることのよせなけれども、女院の御所などかり申す、故實なりとぞ。。

翻訳

大臣就任披露の式典は、それ相応の場をお借りして執り行うのが常である。宇治左大臣頼長公は、東三條殿にて式を催された。東三條殿はそもそも内裏であったが、拝借のお申し出があったため、お上は他所にお移りになられたとか。さしたる縁故はなくとも、女院の御所などをお借りするのが旧来の慣習だそうだ。

註釈

○宇治左大臣殿
藤原頼長。兄である藤原忠道と対立し、父忠実の後押しで藤原長者となり政権を掌握、次々と強権を発動するも、保元の乱で戦死。享年37歳。一説によれば舌を噛み切って自害したという。自らの男色体験を赤裸々に記した日記「台記」はあまりにも有名。

○女院
読みは「にょういん」。天皇の生母、后、内親王他の内、院号もしくは女院の号を受けた女人。


毀誉褒貶渦巻く頼長への含みのある段です。
詳しく書いても鑑賞の足しになりませんので、割愛します。
昔は自分の晴れの場を催すのに、天皇を引っ越しさせた猛者がいたということですね。

追記

「台記」には、献上された鸚鵡(オウム)の観察記録があります。大陸よりやって来た鸚鵡なので、中国語を喋っていたそうです。本朝の文献に登場する鸚鵡の最も古いものです。


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