【徒然草 現代語訳】第百八十五段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

城陸奥守泰盛は、さうなき馬乗りなりけり。馬を引き出させけるに、足をそろへてしきみをゆらりと越ゆるを見ては、これはいさめる馬なりとて、鞍を置きかへさせけり。また、足をのべてしきみに蹴あてぬれば、これはにぶくしてあやまちあるべし」とて、乗らざりけり。
道を知らざらん人、かばかり恐れなむや。

翻訳

城陸奥守安達泰盛は、海内無双の馬乗りであった。家来に馬を引き出させた際、馬が両足を揃えて敷居をふわっと越えるのを見て、「この馬は気が荒い」と云って鞍を他の馬に替えさせた。また、別の馬が、伸ばした足を敷居に当てるのを見、「こやつは鈍い馬だ。必ずや間違いをしでかすであろう」と乗らかなったという。
その道に不案内な者なら、まずもってここまでの用心はしない。

註釈

○城陸奥守泰盛
安達泰盛。先の百八十四段に出てきた義影の三男。後の霜月騒動で、安達一族は北條氏によって滅ぼされた。

○しきみ
閾=敷居。


日本人は「転ばぬ先の杖」が好きですねぇ。

追記

日本に西洋の魔法使いものや魔導士ものの小説がすんなり受け入れられたのって、彼等がたいてい杖を持ってるからなんじゃないかなー。


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