【徒然草 現代語訳】第二百七段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

亀山殿建てられむとて、地をひかれけるに、大きなる蛇、数も知らずこりあつまりたる塚ありけり。この所の神なりといひて、ことのよしを申しければ、いかがあるべきと勅問ありけるに、ふるくよりこの地を占めたる物ならば、さうなく掘りすてられがたしと皆人申されけるに、このおとど一人、王土にをらむ蟲、皇居を建てられむに、何のたたりをかなすべき。鬼神はよこしまなし。とがむべからず。ただみな掘り捨つべしと申されたりければ、塚をくづして、蛇をば大井川に流してけり。さらにたたりなかりけり。

翻訳

後嵯峨院の仙洞御所亀山殿御普請にあたり、地ならしをなさっておられた際、大蛇が無数にとぐろを巻いて塊となった塚が見付かった。この場の神であるということらしく、事の次第をご報告申し上げたところ、「どうしたものだろう」とお上より御下問があった、「古来よりこの地を占有しておるものゆえ、あだやおろそかに掘り捨てるわけにもゆくまい」とその場の者が口を揃えていると、件の大臣実基公お一人だけが、「お上のお統べになる国に棲む蟲が、お上の御殿を建てるのになんの悪さをするものか。鬼神の性根は真っ直ぐである。遠慮は要らない。洗いざらい掘って捨ててしまいなさい」と仰られたため、塚を崩し、蛇たちを一匹残らず大井川に流してしまった。云うまでもなく、なんの祟りもなかった。

註釈

○このおとど
前段に出てきた太政大臣徳大寺実基。


今も昔もなにかっちゃすぐ騒ぎ立てる輩たちがいるんですね。

追記

トップがこうだと、下は楽でしょうねぇ。


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