【徒然草 現代語訳】第六十八段


神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

筑紫に、なにがしの押領使などいふやうなるもののありけるが、土おほねを萬にいみじき薬とて、朝ごとに二つづつ焼きて食ひけること、年久しくなりぬ。或る時、館の内に人もなかりける隙をはかりて、敵襲ひ来りて囲み攻めけるに、館のうちに兵二人出で来て、命を惜しまず戦ひて、皆おひかへしてけり。いと不思議に覚えて、日頃ここにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふは、いかなる人ぞと問ひければ、年来頼みて、朝な朝なめしつる土おほねらにさうらふといひて失せにけり。

深く信をいたしぬれば、かかる徳もありけるにこそ。

翻訳

筑紫に誰それという押領使のような役を負った者がいたが、その者、大根を万病に効く良薬と信じ、毎朝二本づつ焼いて喰うのを日課とし、長年続けていた。ある時、館が無人の隙に乗じて、敵が来襲し取り囲んでさかんに攻め立てた際、館の内に兵士が二人ふいに現れ出で、命を惜しまず奮戦し、敵をもろともに追い返してしまった。不思議なこともあったものよと、ここに常駐なさっておられるとは思えない方々が、かくも勇敢に戦ってくださった、いったいどういう素性の方なんでしょうか、こう問うてみたところ、年来ご信頼いただき、来日も来日も毎朝召し上がってくださっている大根でございます、と云うやまたふいに姿を消した。

信心の深さも極まればこそ、このような功徳を得ることが出来たのであろう。

註釈

○押領使
おうりょうし。律令下で軍人、警備を担う官職。

○館
読みは「たち」。

○隙
読みは「ひま」。

○年来
読みは「としごろ」。


この段、大好き??
大根の神様はカッコいいのだ!

ひさうちみちおさんが漫画化してくださらないかなー。


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